レディースクリニック院長に聞いた よく聞く『PMS』って実際どういうこと?女性ホルモンにまつわる注目キーワード。 HEALTH 2022.05.17

生理前に起こる不調のPMSと発育過程の卵胞から分泌されるAMH。どちらもホルモンとかかわりのある注目の言葉。その意味を正しく理解して、自分のカラダと未来に向き合ってみよう。今回は、丸の内の森 レディースクリニック院長・宋美玄先生にPMSについてお話を聞きました。

『PMS』…女性に起こる、妊娠準備のための、ホルモンが起因する多様な症状。

月経の10日前から3日前ごろまで続く精神的・身体的な症状、「月経前症候群」のことをさす。妊娠・出産に関わる女性特有のホルモンが症状と関係するとされる。多くは20代から30代の女性にみられ、生理が始まると症状が収まる、もしくは消える。

自己管理をしながら、うまく付き合っていこう。

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イライラなどの心の不調から下腹部痛、腰痛といった身体的な痛みまで、PMSといわれる症状は幅広い。「生理前のホルモンバランスによって人それぞれで状況も変わるため、症状に個人差があることも特徴です。月ごとに異なる症状が出る方もいらっしゃいます」と話すのは宋美玄先生。日々PMSによる不調を訴える多くの女性の診察にあたっている。「寝込んでしまう人、生理時期が近くなるたびに憂鬱だという人もいるくらいです」と先生。また、排卵の時期が月によってバラつきがあり、一定の周期にならないこともPMSに該当するそうだ。

EP配合剤(ピル)の服用による子宮内膜等の変化/左は約1カ月の周期でホルモンが変動し、排卵・月経が起こる非服用の様子。右はEP配合剤によりホルモンの量・変動が抑えられ排卵を抑制するため、子宮内膜が厚くならず出血量が減少する様子。出典:『病気がみえるvol. 9婦人科・乳腺外科』(医療情報科学研究所)
EP配合剤(ピル)の服用による子宮内膜等の変化/左は約1カ月の周期でホルモンが変動し、排卵・月経が起こる非服用の様子。右はEP配合剤によりホルモンの量・変動が抑えられ排卵を抑制するため、子宮内膜が厚くならず出血量が減少する様子。出典:『病気がみえるvol. 9婦人科・乳腺外科』(医療情報科学研究所)

こうした生理前のさまざまな症状をさすPMS。その原因には、女性ホルモンの変動があげられる。特に排卵後の黄体期(おうたいき)には、エストロゲンとプロゲステロンの2つのホルモン量が劇的に低下して、精神的・身体的に不調をもたらすといわれている。同時に、症状が重くなる原因として、その人の性格やストレスもあげられる。「もともと細かいことを気にしやすい、生真面目な人は、生理前にとことん落ち込んでしまうことだってあります」。

今までPMSをそれほど気にしなかった人でも、職場でストレスフルな状態に置かれたり、受験やコロナといった環境が心の負担となって、ホルモンバランスに大きな影響を与えてしまうことだってあるという。「小さいお子さんがいる人は思い通りにいかないことや、想定外のことが起こりやすいので、日常的に怒っています。結果、PMSが重くなってしまう人もいらっしゃいます」だが心理的要因がホルモンバランスに作用することはあっても、年齢はPMSに影響しないと指摘する。

私たちは、PMSとどうやって付き合えばいいのだろう。「まずは、生理周期や基礎体温をつけて、『そろそろ私、排卵期だからPMSが出る』と予測して、友人や恋人に理解してもらう。また、カラダに負担がかからないように予定を詰めないなど、自分で予防しましょう」と先生。そして、食事や睡眠に気をつけてほしいとも話す。「特に朝食は自律神経の働きを良くします。また、苦痛をやり過ごすのではなく、ひどい場合は婦人科に相談することも大切です」

ピルを飲むことで排卵を抑え、ホルモンバランスを一定に。

周期ごとに排卵し生理が起こるのは健康の証だが、排卵は同時に女性のカラダへの負担にもなっている。子どもをつくる予定がない人は、ピルを飲んで生理の周期をコントロールするのも、PMSの苦痛から解放される一つの方法だ。

Navigator…〈丸の内の森 レディースクリニック〉院長・宋 美玄(そん・みひょん)

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カリスマ産婦人科医として、診察の傍ら、さまざまな女性の悩み、女性の性、妊娠などについて、積極的に啓蒙活動を行う。

(Hanako1208号掲載/photo : Kenya Abe illustration : Maori Sakai text : Yuko Watari, Keiko Kodera)

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