春のパン紀行…神戸、長野、マニラより。
2018.04.02

花井悠希の朝パン日誌 vol.19 春のパン紀行…神戸、長野、マニラより。

桜がワッと咲いて、すっかり春日和。この2週間旅づいていた私ですが、東京に戻ってきたらちょうど満開の桜で、春の訪れに心躍っています。

旅の楽しみといったら食。中でも私はやっぱりパン!旅先で買ったパンを、帰宅した翌日の朝ごはんで、思い出を振り返りながら食べる時間がたまらなく好きです。もうその土地にはいないのに、昨日までいた場所の香りと空気が目の前のお皿の上に座っている。これを食べてしまったら、その空気をもう2度と味わうことはないかもしれない。そんな刹那的ロマンスのようなセンチメンタルとドラマティックが隣り合わせの旅の余韻を、いただきます。

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花井 悠希 / ヴァイオリニスト

「三重県出身。三重県四日市市観光大使。3歳よりヴァイオリンを始める。 2010年4月21日コロムビアよりデビュー。〈1966カルテット〉メンバー。http://columbia.jp/hanaiyuki/

花井 悠希

From神戸…〈Boulangerie La Lune〉の「ブリオッシュテット」と「ペッシュヴィーニュ」

神戸は美味しいパン屋さんが沢山あっていつもどこにしようか迷ってしまいます。この日は、神戸の街で10年以上続く〈ブランジュリ ラ リュンヌ〉さんへ。

ぷっくり帽子がかわいいこの子は「ブリオッシュ テット」。

ツヤツヤ仕上げが食欲をそそります。持ち上げれば、"ふあ"って効果音が吹き出しで出てきそうなほど軽い。あっさり進入を許してくれるソフトな表面を抜けると、ほわっほわな天国ゾーンへ。生クリームと卵、バターをたっぷり使った柔らかい口あたりとまあるく広がる穏やかな甘みに目尻が下がります。どうして美味しいブリオッシュを食べると、天国の真っ白な雲とぷくぷくした天使が頭に浮かぶのだろう(天国行ったことないけど)。

ブリオッシュの中では甘さは抑えめな方かな?バターのコクが広がるのにのっかって甘みが届く程度だからしつこさがなくて軽やかな甘さです。なのできっとお食事とも相性いいはず!春の陽気にぴったりなご機嫌ブリオッシュ。小さめサイズだし、美味しすぎて3秒で消えました。幻?笑

こちらは、「ペッシュ ヴィーニュ」。昔ブドウ畑に植えていた赤い桃のことをこう呼ぶそうです。

パイは幾重にも重なりシャクシャクと壊れ、その隙間からすかさず走り抜けるはバターの香り。フランス産の赤い桃はシャキッとザクザクした果実感が残っていて、真っ赤な皮の部分は身のしまったぷりっと感もあり、フレッシュなみずみずしさに満ちています。ゴロゴロっとのったシナモンそぼろがジャリジャリと崩れながら甘さと香りでにじり寄り、上からかかるシロップでも甘みをプラスしてくるけれど、真っ赤な桃のキュンと届く甘酸っぱさが全てを迎え入れしっかりまとめあげています。甘さと酸味のバランスがとってもいい!

桃の下のアーモンドプードルの部分はトロトロともったりしていて、桃やシロップ、シナモン色んな味わいを吸い込んでいてジューシーな仕上がり。

From軽井沢…〈haluta〉の「ミュスカ マスカットぶどうパン」

ある日のこと、新宿のNEWoManエキナカに出来た〈MINI by food & company〉というグローサリーにフラリと寄ってみると、軽井沢の〈haluta〉さんのパンが並べられているではありませんか!毎週火・水・金曜日に入荷するそう。

新宿の地で、軽井沢のパンが買えるなんて!と、目を瞑って新緑が揺れる景色を想像しながら深呼吸しそうになって、危ない危ない。我に返りレジにパン1つを持っていったとさ。

選ばれし1つはこの「ミュスカ マスカットぶどうパン」。

綺麗な焼き色故に、外はカリッとが来るかと待ち構えていたら、スッと通りぬける表皮。その抵抗のなさは、私透明人間になったんじゃないかと錯覚するほど(言い過ぎ)。ぽこぽこと大きな気泡を沢山抱えた内側の、ふっくらエアリーな白肌と寄り添う印象で、中と外に隔たりがなく一体感が生まれています。

そしてレーズンをプチっと噛んだ瞬間、あなたもきっと目を丸くするはず。レーズンってある程度味のイメージがあると思うのですが、その上をいく甘さ。上どころじゃない、上の上です。大振りでジューシーなレーズンが惜しみなく甘さを振りまきます。

逃避行したくなった時には、またここに来て軽井沢の風景を思い浮かべながら深呼吸するとします(見かけたらそっとしておいてください)。

From マニラ…〈WILDFLOUR Cafe + Bakery〉の「クロワッサン」と「バナナブレッド」

コンサートで行っていたフィリピンのマニラ。コーヒーを飲みに出かけた時にたまたま見つけたのが〈WILDFLOUR Cafe + Bakery〉でした。ガラス張りで陽の光がたっぷり入る店内は赤い壁に白と黒のタイル、ウッド調の家具でまとめられ、只者ではないオシャレさを放っていました。

吸い込まれるように覗いてみると、カウンターにはパンがズラリ。

この景色を見た瞬間、どんなに胸が高鳴ったか!ズキュンと撃ち抜かれました。

種類も豊富で選びきれず、最終日にももう一度行って日本へ持ち帰る朝パン用にもチョイス。

悩みに悩んで選んだのは、「クロワッサン」。

どうですか?この「はい、合格っ!」とルックス審査があったら一発合格しそうなほど大正解な見た目。わたしは、一目惚れしました(突然の告白)。高さ十分だから空気をたっぷりたっぷり織り重ねていて、ふかっとしています。

外側は少しエッジの効いたザクザクした食感で、内側はもちっとしているタイプ。カーネーションの花びらのようにひらひらと広がる断面は惚れ惚れするほど美しいです。もちっとタイプのクロワッサンは久しぶりでしたが、バターがジューシーに口内でとろけ、甘さとコクが広がって……、もう好きが止まらない!

もう1つ選んだのは「バナナブレッド」。せっかくフィリピンだし、最後はバナナ系を選んでみようかなと。

甘みと一緒に流れ出すバナナの芳香にニンマリ。フィリピンのバナナはそのままフレッシュで食べると日本の物より酸味があるのですが(新鮮だからかな?)、このバナナブレッドもバナナの力強い甘みの中にスッと抜ける爽やかさがあります。だから、重さを一度も感じることのないまま最後まで美味しくいただけました。サラサラと口内を滑る生地は一粒一粒がクッションのような弾みがあってただ柔らかいだけじゃないのがまた良い。

そして、トップに散りばめられたピスタチオと、所々に混ぜられたチョコレートが実にいい仕事をしているんですよね。あくまでも主役はバナナだけど、時折チョコレートが顔を出し味変(みんな大好きバナナチョコ味に)、ピスタチオで香ばしく味変。ビッグサイズなこの子でしたが、あっちへキョロキョロこっちへキョロキョロ、味を行き来しているうちに消えてしまいました(食べてしまいました)。

食べてしまえばもう旅の余韻タイムもおしまいです。ちょっとぐすんとしつつも、また再会出来る時を信じてしばしのお別れ。

次はいつ会えるかな?

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花井 悠希

これだから朝パンはやめられない!

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